現場の作業着って「おしゃれ」になってませんか?
さて、最近、自宅の近所でいくつかの工事が行われています。で、見るとはなしに現場を見ていると、作業員の服装が10年くらい前に比べて随分と変わったなあと感じます。
それこそ、BMCが企画しているような細身のパンツとそれと同じ生地を使用したセットアップのブルゾンを着ている人が多いのです。
昔はもっと「作業着然」とした服装く、シルエットも野暮ったいものが多かったのですが、今は全般的にスタイリッシュになっています。
現場作業員から見られる作業着の変化
暗い話題の多いアパレル業界において、作業服店のワークマンが話題となっていますが、それは高機能・低価格な作業着がデザインもマシになったことで、カジュアルに利用しやすくなったからです。
しかし、おしゃれな作業着はワークマンだけが販売しているのではありません。(そもそもワークマンもおしゃれかどうかは人によって判断が別れます。)時代の流れに応じてワーキングユニフォームメーカー各社がすでに企画・生産・販売しているのです。
最大手メーカーの自重堂を始め、クロダルマ、ジーベックなどさまざまなワーキングユニフォームメーカーがカッコよくて高機能・低価格な商品を発売しています。
もともと、ワーキングユニフォームという服は低価格・高機能が大前提でした。
なぜなら、肉体労働時に着用するため、さまざまな機能性が求められました。丈夫であること、吸水速乾性があること、保温性があること、動きやすさがあること、などなどです。逆にこれらの機能性がなければ、作業員の肉体はモロにダメージを受けますから、機能性は必須なのです。
さらに作業によって、必ず傷みますから買い替えが必要となります。オシャレ着ではなく、ましてや作業員は趣味で着ているわけでもありませんから、低価格であればあるほど喜ばれます。
ですから、ワークマンに限らず、低価格・高機能な服がワーキングユニフォーム業界から登場するのは当然の結果だといえるのです。
実はカジュアルと相性の良い「作業着」
さらに作業服にはもう一つ特徴があり、それはカジュアルと極めて近しい関係にあるということです。そもそもカジュアル服というジャンル自体がスポーツ、ミリタリーなどさまざまな実用着を取り込みミックスして成り立っており、ワーキングもその重要な要素の一つとなっています。
カジュアルウェアの王様ともいえるジーンズももともとは作業服として考案されたものです。
ですから、現代のワーキングユニフォームがカジュアルに進出することは、その昔、ジーンズがカジュアルに取り入れられたことの再現といえるのかもしれません。
そんな中で、カジュアルからワーキングへ進出しようとしているBMCというブランドの誕生も時代の要請だったのではないでしょうか。
しかもBMCはもともとジーンズを基調としたブランドです。デニム生地で作られた作業服をルーツとするジーンズというアイテムを基調とするBMCがワーキングへも進出し、ワーキングとカジュアルの融合である「ワーカジ」を掲げるのは、奇策に見えて、実は正攻法だったといえそうです。
また、BMCは今でこそ、ホームセンターや作業服店に商品を卸していますが、出自はファッションであり、ファッションブランドとしての企画力はワークウェアブランドの中でも群を抜いております。これは、代表の青野氏がエドウィンの企画チームでヒット商品を連発していたという実績があるからこそでしょう。だからこそ、他のワークウェアより高い値段で販売されていますが、差別化が可能となり売り上げに繋がっているのです。
そんなわけで、みなさんも工事現場の作業員の服装を一度よく観察してみてください。
ライター:南 充浩(みなみ みつひろ)
1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブログ( http://minamimitsuhiro.info/ )】