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90年代以降のジーンズの歴史を振り返る② ビンテージジーンズブームからローライズジーンズブームへ

ジーンズブームを振り返る第2回目です。

前回は90年代前半のソフトジーンズブームと90年代半ばからのビンテージジーンズブームを振り返りました。今回はその続きからです。

 

ビンテージジーンズ・デニム

〇ビンテージジーンズブームで起きたパラダイムシフト

ビンテージジーンズブームは、見た目のデザインやディテールを当時に寄せるだけでなく、生地の表面感や色落ちなども当時に近い物にすることが求められました。またヒゲやアタリと呼ばれる穿きシワに沿った洗い加工が注目を集め、洗い加工という工程に脚光が集まるようになりました。

生地でいうと、80年代のデニム生地はひたすらに量産に適した進化が追求されていました。低コストな空紡糸を使って表面の凹凸感のないデニム生地が好まれたのですが、ビンテージジーンズブーム以降は真逆のデニム生地が好まれるようになりました。コストの高いリング糸を使い、そのリング糸もストレート(まっすぐで均一な太さ)ではなく、太いところ(節=スラブ)と細いところがあるスラブ糸と呼ばれる糸を使うようになり、表面に凹凸感のあるザラザラした手触りのデニム生地が好まれました。

このビンテージジーンズブーム以降、スキニージーンズ登場までの10数年間はこの凹凸感のあるデニム生地が業界のスタンダードとして君臨し続けるのです。

 

ローライズジーンズ・デニム

〇ローライズジーンズブーム

2000年近くになってくると、ようやくビンテージジーンズブームも沈静化し始めることになります。代わって注目が集まったのはローライズジーンズと呼ばれるジーンズです。

これはレディースから盛り上がり始めました。

それまでのジーンズは股上が深く、メンズで言えば30センチくらいが標準でした。ローライズというのは「股上が浅い」という意味で、レディースでは股上が26センチ前後という浅さの商品が注目を集めることになったのです。

またシルエットもズドンと太目が多かったビンテージジーンズに反して細身が主流となりました。細くて股上が浅いローライズジーンズは瞬く間に女性のジーンズ市場を席捲していったのです。わずか、3年くらいの間に、レディースジーンズ売り場からかつての股上の深いジーンズは姿を消すようになります。

レディースで流行した物はメンズにも必ず波及します。レディースから遅れること3年くらいで、メンズのジーンズもローライズ化しました。

このローライズジーンズに使われた生地は、ビンテージ調のものが主流でした。シルエットはまったく変わってしまったのに、使われるデニム生地はほぼ同じだったというのはなんとも面白い現象でした。

ビンテージジーンズはメンズが牽引したブームですが、ローライズはレディースが牽引したブームで、これ以降、ジーンズのブームはレディースが先行することになります。今から思えば、ジーンズ市場の主導権がメンズからレディースに映った瞬間でもありました。

股上が浅くて細身のローライズジーンズはメンズにも波及。その後、2003年にエディ・スリマンがディオールオムで、超ピタピタシルエットを提案したことと相まって、ピチピチシルエットがファッション業界全体のスタンダードになります。

古い時代のジーンズをメンズ風に解釈したものがビンテージジーンズブームであることは間違いないことですが、同じ生地で作られたローライズジーンズという商品は、ビンテージジーンズをレディース主導で解釈した物ではないか、そんな気がしています。

そして、このローライズで細身シルエットというジーンズの形は、次のプレミアムジーンズブーム、その次のスキニージーンズブームと引き継がれ、2015年のガウチョパンツブームでワイドシルエットが復活するまでの約15年間、レディースのみならずメンズカジュアルパンツの基本シルエットでもあり続けたのです。

要するにこの2000年から2015年の15年間、カジュアルパンツはメンズ、レディースともに股上浅めで細身シルエットで在り続けたということです。

 

 

ライター:南 充浩(みなみ みつひろ)

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブログ( http://minamimitsuhiro.info/ )】

 

 

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