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90年代以降のジーンズの歴史を振り返る③ プレミアムジーンズブーム

90年代からのジーンズの歴史を振り返るシリーズの第3回目です。

 

ローライズジーンズ×ブーツカット

ローライズ×ブーツカットが流行

前回は2000年頃のローライズジーンズブームについての振り返りでした。2020年の現在から思うと、股上を浅くした「ローライズジーンズ」というのは、エポックメイキングでした。

2000年当時、数年内にすべてのパンツがローライズ化し、それが15年間に渡って「王道」として君臨し続けるとは当時30歳の自分は予想することができませんでした。

90年代半ばから始まったビンテージジーンズブームはメンズが牽引したブームでしたが、ローライズはレディースが牽引したブームで、少し遅れてメンズにも波及しました。ローライズ以降、メンズが牽引したジーンズブームは無くなり、レディースがジーンズファッションをも牽引することになります。

ローライズ時代の人気シルエットは、ブーツカットです。もちろん、レギュラーストレート、スリムストレートもありましたが、徐々にブーツカット人気に集約されていきました。太目シルエットのビンテージジーンズとは対極的に細身が好まれました。

ローライズ+細身+ブーツカット

というのが2000年代前半のジーンズの主力商品ということになります。

 

もちろん、大手ジーンズメーカー各社もローライズブーツカットを大量生産し、それが飛ぶように売れました。各社とも「美脚」シルエットを打ち出し、大いに稼ぎました。すでにビンテージジーンズブームで1万円を越える高額ジーンズがマスに受け入れられる土壌ができていたため、レディース向けのローライズブーツカットジーンズはだいたい1万3000円前後の値段が付けられましたが、それでも「高すぎる」という声はほとんど起きませんでした。エドウインの「サムシング」、ビッグジョンの「ブラッパーズ」、タカヤ商事の「スウィートキャメル」など各社のレディースラインがジーンズ売り場の主力となっていました。

 

プレミアムジーンズ

プレミアムジーンズブームの始まり

2003年頃から、同じローライズブーツカット商品でも大手ジーンズメーカーの商品ではなく、より高額な欧米ブランドの商品に注目が集まり始めることになります。「セブン・フォーオールマンカインド」「ヤヌーク」「ペーパーデニム」「AG」「トゥルーレリジョン」などのブランドが注目されました。「ディーゼル」「リプレイ」あたりのブランドの注目が高まり始めたのもこの頃です。

今となっては懐かしいブランド名が並んでいます。消えてしまったブランドもあり物事の栄枯盛衰を感じずにはいられません。

インポート商品ということもあり、価格は2万円~3万円台半ばという驚くほど高価なジーンズでしたが、当時の20代・30代の女性はこれをほとんど定価で買っていたのです。

もちろん、ジーンズカジュアル専門店でも販売されましたが、これらの商品のメインの売り場は百貨店のジーンズ売り場でした。この2万円台~3万円台のインポートブランドと並ぶと、1万3000円程度の大手ジーンズメーカーの商品は割安に感じられました。何せインポートブランドの半額程度なのですから。

当時の大手ジーンズメーカーの営業マンからは「百貨店から『貴社の商品は安すぎる。もっと値上げしてインポートブランド並みにしてもらいたい』と言われる」という愚痴をよく聞いたものでした。

3990円のユニクロジーンズが猛威を振るっている現在からは考えられない状況でした。

そんな高額インポートジーンズは「プレミアムジーンズ」と呼ばれ、大人気商品となり、その人気のピークは2005年~2007年までの3年間でした。この3年間は百貨店のレディースジーンズ売り場では「ジーンズの値段は高ければ高いほど売れる」とまで言われたほどでした。

しかし、その人気も2007年には翳りが見え始め、2008年には終了してしまいました。

そして、2008年からはスキニージーンズの隆盛が始まることとなるのですが、この2008年以降、大手ジーンズメーカー各社には苦境が訪れることになります。スキニージーンズブームと大手ジーンズメーカーの苦境はまた次回に。

2020年も残すところあとわずかになりました。

みなさま。良いお年を。

 

ライター:南 充浩(みなみ みつひろ)

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間20万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブログ( http://minamimitsuhiro.info/ )】

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