セルビッチとは
一般的に「赤耳(RED TAB)」と呼ばれるセルビッチ。高負荷化価値なデニム生地の象徴とされていまして、デニムマニアの中には、セルビッチデニムファンの方も多いかと思います。
ちなみに、以前販売したBMCの国産リジッドジーンズも、セルビッチでしたね。
人気を博したリーバイス501が糸色に赤を使用したため、セルビッチといえば「赤耳(アカミミ)」と認識されるようになりました。
※耳自体はデニム生地に限らず、すべての生地に存在しています。
セルビッジジーンズの裾を折り返すと、上の画像のようになっています。
ロールアップで穿くとチラリと見えておしゃれ。
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セルビッチデニムとは
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セルビッチデニムとは、旧式織機でシャトルを通して、カタカタと織られたデニム生地で、生地の両端に「耳」という部分ができ「ほつれ止め」が施されています。
シャトル(杼/ひ)とは、織物を織るときに、経糸の間に緯糸を通すのに使われる道具です。
ぴんと張った経糸の間に、緯糸を収めたシャトルを左右の端から反対側の端まで通して織り上げていきます。
出典:ウィキメディア・コモンズ (Wikimedia Commons)
シャトル織機は基本手織りと同じ方法で織られるため、手織りに近い素材感があります。
対して、最新の織機はコンピュータ制御のためシャトル織機とはケタ違いの生産効率があります。「革新織機」と呼ばれています。
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セルビッチデニムのメリット・デメリット
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旧式の織機を使用して生産されるセルビッチデニムは、一般のデニム生地の数倍織るのに時間がかかります。
そして、通常のデニム生地の横巾が150cmなのですが、旧織機を使ったセルビッチデニムは横巾80cm程度しか織れません。
セルビッチはデニム生地の耳を使う、パターン・裁断も重要です。
裁断の略図を見ると、巾が狭いセルビッジ生地の場合、1本のジーンズを作るにもたくさんの生地が必要になります。
生地原価もあがり、製品も高価になります。
また、セルビッチの生地は厚手が多く縫いにくく扱いづらいので、きれいに織り上げるには職人技が必要です。
今では革新織機の登場により、シャトル織機は減少してあまり残っていないそうです。機械のメンテナンスも大変だと聞きました。
つまり、旧型織り機で織られたデニムは希少価値があるということです。
また味わいという点でもマニアにはたまらないポイントですよね。
❝ 革新織機は高速回転で生産するため、準備工程で糸に付ける糊の量が多く、製織時にかける糸の張力が強い。そのため織り上げた生地の表面は均一できれいだが、平板な感じになってしまう。逆にシャトル織機だと、糊の量が少なく糸の張力も弱いため糸の屈曲が深くなり、凹凸感のある織物になる。これがセルビッジデニムならではの味わいだ。
出典:繊研新聞 ❞
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セルビッチデニムの大切な工程「延反」
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生地は輸送の際、筒状に巻かれたり折り畳まれて袋詰めにされたりして、生地そのものの重みや摩擦、糸の引っ張りなどによる負荷を受けます。
それを裁断前に広げ、生地をリラックスさせて元の状態にもどし、一気に裁断できるように整える【放反】【延反】という工程があります。
セルビッチデニム生地は耳を残した裁断が必要です。
そこで編み出されたのが、セルビッチデニムだけにある延反技術【耳揃え】。
裁断台にデニム生地を延ばして、幾重にも重ねていきます。
これを行わないと、ジーンズの両脇にセルビッチ(デニムの耳)が出てきません。
ジーンズを製造する上であまり注目されない工程の「延反」ですが、セルビッチデニムを使用したジーンズを製造する上でとても大切な工程なんです。
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デニムは綾織、でも耳部分は朱子織
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デニムは綾織、でも耳部分は朱子織です。
綾織と朱子織については、こちらのジャーナルで説明していますのでご参照ください。
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何故、赤耳が重視されるのか?
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デニムに限らずすべての生地の両端に耳が存在するのは、生地が端からほつれてこないようにするためです。
しかし、デニム生地の耳、とりわけ赤耳が重要視されるようになったのは、95年ごろから盛り上がったビンテージジーンズブームに端を発しています。
この赤耳は1970年ごろまでのデニム生地には付けられていたのですが、徐々に減っていき、技術革新が進んだ80年代にはほぼ姿を消していました。
ところが「古き良き時代のジーンズ」への価値が高まったビンテージジーンズブームが起きたために、当時のデニム生地には付けられていた赤耳も注目を集めることとなったのです。
極端な言い方をすれば、赤耳付きは正統派ビンテージ、赤耳無しは80年代以降であまり価値が高くない、そういう価値観が形成されていきました。
ビンテージジーンズブームでは何十年前の古い商品が高値で取引されましたが、そのような物の数には限りがありますから、マス層には行き渡りません。当然、当時の商品をコピーした「レプリカ商品」が多数生み出されることとなり、ビンテージジーンズブームの本体を支えたのはこのレプリカ商品だったと言っても過言ではありません。
商品のデザインをレプリカするなら、当然生地もレプリカするということになり、ここでレプリカの赤耳デニム生地が多数生み出されることとなりました。
そうです。わざわざセルビッチ付きデニム生地をレプリカして作るようになったのです。
先述しましたように、昔の織機はシャトル織機と呼ばれるものでした。これが80年代に技術革新が進むと、姿を消していったのです。もっと高速でもっとたくさん織れる織機が次々と登場し、デニム生地工場の織機もそちらに置き換えられていったのです。
ちなみにこの「シャトル」というものが、スペースシャトルの語源になっているのです。地上と宇宙をシャトルのように往復することからスペースシャトルと名付けられました。
それからもう一つ、その辺りから大きく変わったのは、生地の幅がほぼ倍増して広くなったのです。ビンテージデニム生地のころの織機の幅はだいたい70~80センチしかありませんでした。この両端がセルビッジです。ですが、第二次世界大戦以降の技術革新によってより効率的により大量に生地が織れるように、織機の幅は倍増します。狭くても1メートルを超えるようになり、平均すると120センチ~150センチ程度の生地幅になりました。
70~80センチの生地幅を小幅・狭幅と呼び、1メートルを越える新型織機の生地幅を広幅と呼びます。
ビンテージジーンズブームが起き始めた95年には実はデニム生地工場のほとんどは広幅織機に代わっていたのです。
ではどうやってセルビッチデニム生地を復活させたのかというと、昔の小幅織機を探し出して設置したのは言うまでもありません。幸いなことに古い文物を保管しておくことでは世界から定評がある我が国には使われていない小幅織機が大量に残されていたのです。
ですが、95年以降の生地流通量と残されていた織機の台数から考えると、すべてがこれで賄われたとは考えにくく、広幅で両端だけでなく、生地の中央にセルビッチ柄を入れて織るという「広幅の疑似セルビッチデニム生地」が多数生産されたと言われています。実際にデニム生地工場からも聞いたことがあります。
レプリカジーンズにはこの疑似セルビッチ生地が多く使われていたようです。
正直なお話、現代に復活したセルビッチデニム生地と通常の広幅デニム生地の一体何が違うのかというのは、穿き比べてみてもよくわかりません。格別に気持ちいいわけでもないですし、格別な機能性があるわけではありません。「付いている」というところに満足感を覚える程度ではないでしょうか。
特に耐久性が上がるわけでもありませんし、昔ながらっぽさがあるということぐらいではないかと思います。
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いろんな耳の色
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セルビッチデニムは赤糸を使った「赤耳」が主流ですが、青糸の「青耳」、黄色糸の「黄耳」、「紫耳」、ピンク色の「桃耳」なんかも出てきてバリエーションが豊富になりました。
実は色ごとに納付するブランドを示していたという説があります。有名な「赤耳」は当時「リーバイスに納品するデニム生地」という意味だったそうです。青なら〇〇ブランド、黄色なら〇〇ブランドという風に、出荷するときに送り先を間違えないように色を分けていたということなのだそうです。
ですから、赤耳付きのリーバイス以外のブランド品というのは、本来の意味からは少しずれるのかもしれませんね。
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